- 制作実績
CTデータ(DICOM)から3Dプリント
こんにちは、fukuoka tanaka です。今日の実績紹介はCTスキャンで撮影したデータをもとに3Dプリントするまでのお話です。
実はshrinkでは、ずいぶんと前から医療関係や、文化財などのCTデータから3Dプリントをしておりまして、今後もいろいろと活用が見込める技術なので多くの方に知って頂ければと思い紹介させて頂く事にしました。また、CTデータを3Dプリントする際のテクニックも少しだけ公開させて頂きます。
CTデータを使って3Dプリントするにはデータ変換が必要
まず、CTスキャンのデータにはさまざまな種類があるのですが、一般的には「DICOMデータ」というものを使って3Dプリントまでもっていくことが多いです。以下3Dプリントまでの流れです。
CTスキャン ➡ CTスキャンのソフトウェアからDICOMデータをエクスポート ➡ 専用ソフトウェアでDICOMデータをSTLデータに変換
➡ STLデータをスライスデータ(G-codeなど) に変換 ➡ 3Dプリント
と言った感じです、良く分かんないかもですがガンガンに進めますw
残念ながら弊社にはCTスキャナーはありません。
そのため3Dプリントを希望される医療系や計測系、博物館さんなどからDICOMデータが入稿されてきます。
DICOMデータは何ぞやと言うと、簡単に言えば対象を輪切りにした画像データです。ですので例えば輪切りの厚み(間隔)が1㎜よりも0.5㎜の方が画像の枚数が2倍に増えた情報量の多いデータということになります。
↑左のモデルは右のモデルに比べ【スライスピッチ】が広い※画像枚数が少ない
この画像データであるDICOMデータのままでは、3Dプリンターとの互換性がないため、専用ソフトを使って3Dプリント可能なSTLデータというメッシュデータに変換する必要があります。
骨の見極めが大切
はいっ!ここで㊙テク其の一!
医療関係で例をあげると頭蓋骨など「骨」の模型を求められることが多いのですが、CTデータでは人の皮膚から骨までデータ化されているため「どこからが骨なのか」がとても重要です。もちろんソフトウェア内のツールで骨の部分をオートで検出する機能はあります。ですが、ここが落とし穴、手術利用など高精度な骨模型を求めらる場合は、オートでの骨検出のみでは最適とは言えません。最後の微調整はマニュアルで詰めていく必要があるのです。
(もちろんソフトウェアによりますので、あくまでも個人的な意見でお聞き下さい)
これは何度もお医者さんと3Dプリントモデルを確認して意見交換を行ったことで適性値を発見するに至りました。
骨の見極めの違いで生まれる形状の違い
適性値(左)に比べて、オートでの検出では少しぽってりしたイメージ(右)
軟骨はCTに写らない!?
話は変わりますがCTスキャナーにも苦手なことがあって、実は「軟骨」をX線で捉えることができません。私の好きなやげん軟骨もビールのお供には最高ですが、CTには写りません。たぶん。
はいっ!ここで㊙テク其の二!
CTで写らない軟骨ですが、周囲の骨や皮膚の形状から判断して検出する事ができます。もちろんこの作業もマニュアルで行う作業になります。以下は実際に鼻軟骨をデータ化したモデルになります。軟骨を再現して骨と合わせることで、例えば美容整形などで利用できる模型を作る事ができるのです。
通常は左のモデルのように軟骨(鼻軟骨)は写らない
滑らかにされては困るのよ
さてさて、DICOMデータから取り出す範囲(CT値)が決まったら、次はSTLに変換してエクスポート作業へと進めます。
はいよっ!ここで㊙テク其の三!
STL変換する際の作業工程の中に、実はスムージング(表面を滑らかにする)がデフォルトで入っているソフトウェアがよくあるんです。これが厄介。スムージングを勝手にやられてしまうと本来の形状再現ができない場合が多いんです。このスムージングをOFFに出来るソフトもあれば、中にはOFFにできないソフトもあるので注意しましょう。特に文化財案件では形状が少しでも変わる事は超NGです。
3Dプリントし易い形状にしてあげる
無事にSTL変換ができたら次は3DプリントするためにG-codeに変換するのですが、これは各3Dプリンターの専用ソフトやフリーのスライスソフトで問題なく出来ます。ですが。。。
よしきた!最後の㊙テク其の四!
STLをスライスする前にshrinkでは「3Dプリントし易いモデル」にデータを手直ししてあげます。このひと手間がプリントクオリティを上げるんです。
例えば、歯科系のモデルだとすると、銀歯がある方のCTデータというのは「アーチファクト」と言われるX線ノイズが発生します。銀歯に限らず金属に対してはノイズが出てしまうんですね。このノイズをそのまま3Dプリントする必要は無いですし、造形品質を下げることにも繋がります。ですので事前に3Dモデリングソフトでノイズ部分を無くしちゃいます。
その他にも、造形が安定するように骨内の微細な穴を埋めたり、宙に浮いた破片などの必要が無いものを消したりと、各モデルに応じた編集作業を行います。
ザックリでしたが、上記のような流れを経てお客様に3Dプリントモデルをお届けしています。
実は誰でも手に入るDICOMデータ
ちなみに皆さんが病院でCTを撮った際は、お医者さんに言えば基本無料でCTデータはもらえます。その時はぜひ、「DICOMデータで下さい♪」と言って頂ければ、どなたでもshrinkで3Dプリントすることができますよ。自分の骨のデータってなんだか不思議で興味深いものですよ~。
最後に…DICOMデータを使って3Dプリントしたモデルの応用編みたいな物になりますが、以下の写真はモデリングソフトを使って下顎が動くように可動ギミックを追加した3Dプリントモデルになります。
噛めますw
ではまた✋
↑光造形機で3Dプリントしたモデル